「もの静かで、自然の趣を持ち、住む人の心を癒してくれる無の空間」 そんな理想の庭を求めて、新世紀で三〇年を迎えました。その間、多くの人々との出会いの中で、ご指導・ご支援・ご愛顧を賜りましたことを深く感謝いたしますとともに、厚く御礼申しあげます。
私どもの庭造りは、住む人の好みや利便性・景観・家族構成など、いろいろな要望をもとに研鑽し、住まいと庭が一体となるように、個性豊にコーディネイトします。はじめは人の手で造られた空間ですが、自然風土の四季を経ることで、樹木は根付き庭石は苔むして落ち着きを見せます。そして下草や枝葉が活き活きと繁り始めますと、人為を超えたやすらぎの空間へと育まれていきます。その空間の中に自分の身を置いたときに人との出会いがありますと、日頃の疲れやいやなことを忘れさせてくれる、何か「ほっとする」癒しの空間を体感し、心がリフレッシュできる瞬間です。
春になると、花壇や庭木に瑞々しい花が咲き、夏には新緑からやわらかなこもれ日がさし、秋は木々に鮮やかな紅葉が見られ、冬は凛とした木の芽が春を待ち、庭という限られた空間の中にも豊に季節を彩ります。庭に野鳥が水遊びに来るようになりましたとか、庭にめずらしい花が咲きましたなど、四季折々の便りをいただきますと、庭造りや、庭の景観を思い出して喜びや楽しさをともに共有し、日頃の苦労も忘れて感動します。
最近、環境問題がクローズアップされている中で、ヒートアイランド現象による都市の温暖化抑止や、省エネルギーの視点から、ビルの屋上緑化や壁面緑化が条例化されました。都市においては、近代化や人口の増大により自然の緑が破壊されていくなかで、個人の庭の緑は貴重ですし重要です。都市の中の公園や街路樹や工場緑化などの緑に比べますと、お庭の緑は小規模かもしれませんが、地域の身近な緑として住む人・隣人・道行く人々にも親しまれ、私たちの日々の暮らしや生活にも癒しの空間として大きな役割を果たしています。
そして、自らの仕事が、人と自然の営みの輪の一齣としてかかわれることを幸運と思いますと同時に、これからも「閑雅の庭」造りを通して、多くの方々とこの感動を分かち合えることを願っております。そして自然の緑を通して地域社会に貢献してまいります。
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